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2024 .12.29
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モノトーンミュージアム『嵐の城と三匹の子羊』

想定難易度は「普通」です。
プレイヤー:3人
セッション時間:テキセで8時間程度
GMはサプリメント「インカルツァンド」所有推奨。PLはサプリなしでも大丈夫です。
※エネミーについてはPCのレベルや構成によって、都度GMが調節して下さい。
※グロテスクな表現があります。


▼予告

 ――嵐の音で目が覚めた――

 君達が目を覚ますと、見慣れた寝室、いつものベッドの中、仲良しのきょうだい。
 そこには君達と、一人の従者しかいなかった。
 そして君達は、昔の思い出をスッポリと失っていた。
「お目覚めですか」と従者は微笑む。
 そうして、君達に薔薇色の紅茶を差し出すことだろう。

 ――そこは晴れない嵐に閉ざされた城。
 ――記憶の欠けた子羊の城。
 ――悔恨と、希望と、絶望とを閉じ込めた、灰色の城。


 モノトーンミュージアム
    『嵐の城と三匹の子羊』

 ――かくして、物語は紡がれる。

▼演目データ
プレイヤー:三人
演者レベル:任意
セッション時間:テキセで8時間
※GMへ
初期経験点ありなどにする場合は、適宜エネミーのデータを調整すること。
カニバリズム表現があります。苦手な方はご注意ください。
参加PLへ「グロテスクな表現がある」と伝えるように。

▼ハンドアウト
▽PC『三匹の子羊』
・推奨クラス:貴人 ※従者、海守はそぐわない。
・パートナー:公式NPCは設定しない。PC同士で、任意の感情で持つこと。
・出自:このシナリオオリジナルのものを配布。
【不思議なツノ】君達には不思議なツノが産まれた時から生えている。デザインは自由。/兆候表を振った後、剥離値を+1することで振り直すことができる。何度でも使用可能。
・境遇:このシナリオオリジナルのものを配布。
【欠片の記憶】君達の記憶は曖昧だ。けれど、母親から愛された記憶が確かにある。それは君達の存在を確かにする。/戦闘不能になった際、剥離値を+1することで、HP1の状態で復活できる。何度でも使用可能。
===========================
君達三人は血の繋がった兄弟/姉妹だ。年齢差は自由。
シナリオ開始と同時に、君達は「嵐に閉ざされた城」で目を覚ます。
君達は過去の記憶が朧である。
覚えているのは、
・君達が、「とある国の姫君の実子」というやんごとない血筋であること。
・この城は自分達が幼い頃から過ごしてきた城であること。
・NPC「永遠のしもべ」のこと。
・母親――上記の「とある国の姫君」から、「この城から出てはいけない」と約束したこと。
===========================
▼登場NPC
▽永遠のしもべ
 PC達専属の従者。不死者×従者。
 PC達が幼い頃から、君達の世話をしてきた。
 嵐の城には、PC達と永遠のしもべしか存在しない。
※クラス「従者」はサプリメント「インカルツァンド」収録です。該当サプリを非所持のGMは、不死者×賢者などでキャラを組むとよいでしょう。
※GMはRPし易いように性格や口調などを設定すること。
※虹色になっている部分は「血」である。このことはシナリオ前にPL・PCには教えないこと。
 シナリオ内で虹色の部分を見せて欲しいとRPされたら、「恥ずかしいのでダメです」「秘密です」「掟で見せられないことになっていて」等と断ること。
※このテキスト内容では便宜上、「彼」と形容し、私~ですます口調にしています。



<オープニングフェイズ>
▼シーン1:灰色の朝
「いい? この城から出ては駄目よ」
「三人なら、きっと大丈夫。きっと、きっと大丈夫だから……」
「お母さんは、みんなのことが大好きよ。愛してるわ」
そう言って、母親が君達をぎゅうっとぎゅうっと抱きしめた。
優しいにおい。安心する温度。
そして彼女はこう言った。
「おやすみなさい――どうか、どうか良い夢を――……」
――嵐の音が聞こえる――
君達は目を覚ました。
そこは君達の部屋、いつものベッド、見慣れた風景。
窓の外は大嵐で、窓がガタガタと震えている。
「お目覚めですか」
そして、ベッド脇には君達の従者が立っていた。
RPどうぞ。
>記憶がない
「……然様で。いずれ、思い出しましょうとも」
>他の皆は?
「ここにはおりません。しばらく帰られません。危機が迫ったからです。……そのような御導が下ったのです」
「この城から出てはいけませんよ。ここは皆様をお守りする為の場所。外は危険です。嵐も吹き荒れております」

>いつまでここにいたらいいの?
「きっと危機も去れば、めでたしめでたしの御導も響きましょう」
「まずは目覚めのお茶をお淹れしましょう」

そう言って、従者は君達に紅茶を差し出した。
薔薇色の、なんともかぐわしいお茶だ。
口にすれば、なんとも甘美な味が口の中で至上を奏でることだろう。
心が、体が、ホッと満たされるような。
>なんのお茶?
「ご主人様の為に、特別にお取り寄せしたものですよ」
>もしお茶に何か調べるなどの宣言をした場合、知覚で判定をさせる(難易度シークレット。実際は13)
成功で
よく見てみると……そのお茶の水面は、まるでオパールのような煌きをしていた。
とても美しい。心が奪われる。
※GMへ
従者の血が混ぜられた紅茶である。不死者である証の虹色が血に露見しているのだ。「オパール 赤」で検索すると正にそんな感じです。
以降、このシナリオで登場する飲食物には、全て従者の血肉が混ぜ込まれている。
これはPCの食肉衝動を抑えるためだ。
PCは、もはや人間が普通に口にするものを体が受け付けないのである。
RPひと段落で
「……支度をして、朝食に致しましょう」
と次の描写に移る。
ガランとした食堂。
蝋燭の明かりが暗い城を照らす。
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは小さなチョコレートケーキが一つだけ。
だけど君達は、不思議とそのひとつで“満ち足りる”のだ。
一口齧れば、あら不思議。なんて美味しいことだろう! 体も心も満たされる。
お茶はあの薔薇色のお茶だ。これもまた、心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
なお、従者は給仕として傍に控えている。
>なんでこれだけ?
「食糧庫には限りがありますゆえ……一品だけで申し訳ない」
>君も食べる?
「私は先に食事を済ませております。そちらはご主人様の為に用意させて頂いたものです、どうぞ遠慮なくお召し上がりください」
>まあまあ食べなよ、はいあ~ん
御命令ならば、とそれに従う。特にリアクションはない。
「お食事の後は、お勉強の時間ですよ」
食事シーンが終わればシーンエンド。
<ミドルフェイズ>
▼シーン2:嵐の城と三匹の子羊
食事も終わった後、君達は血筋にふさわしい教養を身に着けるべくの時間を過ごすこととなる。
「まずは、剣のお稽古です」
君達は室内訓練所に、模擬剣を持って並んでいる。正面には従者が、同じく模擬剣を持っている。
「いざ、参ります」 儀礼に則り、剣を構えて一礼
というわけで、従者と命中回避対決です。
命中、回避で各自ダイスどうぞ。模擬剣の補正は±0とします。
ダメージ算出もしておきましょう。「1d6+攻撃力+スキルなどの補正」です。
模擬剣は(斬)属性、攻撃力は0です。なお模擬剣なので、実際にHPが削れることはありません。
※ここは初心者PL用の、戦闘チュートリアルみたいなやつです。ここでGMは初心者さんに判定方法やらを解説すると良いでしょう。
 全員熟練PLの場合は、命中回避判定だけでいいかも。
 従者についてはデータを作成することを推奨。データを作成しない場合は、2d6+6で目標値を決めるとよいです。
判定が成功したPCに
「お見事です」
ダメだったPCに
「集中ですよ、ご主人様」
クリティカルが出たら
「これはこれは、素晴らしい」
クリティカルしたPCへは、従者からご褒美として【薔薇色の飴玉】が贈られる。
【薔薇色の飴玉】使い捨て。マイナーアクションで使用。MPとHPを1d6回復。
RPひと段落で
従者は懐から銀時計を取り出し、時間を確認して
「お疲れ様でした。本日の剣のお稽古はここまでです」
「一休みされましたら食堂へ。ランチにしましょう」
食堂へ向かうRPで
ガランとした食堂。
蝋燭の明かりが暗い城を照らす。
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは小さなフロランタンが一つだけ。
だけど君達は、不思議とそのひとつで“満ち足りる”のだ。
一口齧れば、あら不思議。なんて美味しいことだろう! 体も心も満たされる。
お茶はあの薔薇色のお茶だ。これもまた、心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
>どうしてこれだけでお腹いっぱいになれるの?
「……ちょっとした魔法ですよ。栄養管理はしっかり行っておりますので」
>何を使ってるの?
「城に備蓄されている食料ですよ」
>食料はどこから?
「嵐の前に貯蔵したものです。防腐のまじないはかけてありますよ」
>もっとパーッと食べたい
君達はわずかにしか食べていない筈だが、心もお腹も十二分に満たされているのだ。
まあ、「満腹!もうむり!」ってほどじゃないので、まだ食べようと思えば食べられるが……。
「……、足りませんか……?」 眉根を寄せる
それでもPCがお代わりをねだったら
「ふむ……アフタヌーンティーでお持ちするお菓子を少々多くしましょう」
「備蓄があるとはいえ、限られているのですよ。ご主人様は貴き身分の方ですが、であるからこそ、節制を学ばねばなりません」
「さて。午後からもお稽古とお勉強ですよ。皆様には、由緒正しき(PCの苗字)家の者として相応しき教養を身に着けて頂かなければ」
「その前に、まずは午睡の時間です。しっかりお休みくださいませ」
RPひと段落で
君達は庭が見える一室に集まった。
窓はやはり嵐に濡れていて、丁寧に整えられている庭の木々も暴風に揺れている……。
君達は席につき、テーブルの上の教科書を開くことだろう。
「次は、異国語のお勉強です」 君達の正面に従者が立っている
「さあ、68ページを開いて……」
【社会】でダイスどうぞ。
達成値5以下:ダメでした……。
達成値6~8:簡単な問題が解けました
達成値9~11:基礎はバッチリ!
達成値12~:難しい問題も解けました。ご褒美として従者から【薔薇色の飴玉】プレゼント。
RPひと段落で
従者は懐から銀時計を取り出し、時間を確認して
「お疲れ様でした。本日の異国後のお勉強はここまでです」
「アフタヌーンティーにしましょう。どちらで過ごしましょうか」
選択肢としては、自室、食堂、ちょっと濡れるかもしれないけど庭の東屋や、庭の傍のテラスとか。
移動したRPで
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは小さなマカロンが3つほど。
だけど君達は、不思議とそれっぽっちで“満ち足りる”のだ。
一口齧れば、あら不思議。なんて美味しいことだろう! 体も心も満たされる。
お茶はあの薔薇色のお茶だ。これもまた、心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
RPひと段落で
「次は、芸術のお稽古です」
君達の手には鉛筆とスケッチブック、それから正面にはテーブルに置かれた布と花瓶、活けられた薔薇。
「光の反射を意識して……」
【意志】or【感応】で判定。
達成値5以下:ダメでした……。
達成値6~8:そこそこ上手に描けました。
達成値9~11:上手に描けました!
達成値12~:会心の出来!ご褒美として従者から【薔薇色の飴玉】プレゼント。
RPひと段落で
従者は懐から銀時計を取り出し、時間を確認して
「お疲れ様でした。本日の芸術のお稽古はここまでです」
「日も暮れて参りましたね。夕食の時間です。一休みしたら、食堂へどうぞ」
RPひと段落で
ガランとした食堂。
蝋燭の明かりが暗い城を照らす。
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは小さなミートパイが一つだけ。
だけど君達は、不思議とそのひとつで“満ち足りる”のだ。
一口齧れば、あら不思議。なんて美味しいことだろう! 体も心も満たされる。
お茶はあの薔薇色のお茶だ。これもまた、心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
>何の肉?
「……食糧庫に保存されている、家畜の肉ですよ」
RPひと段落で
夕食の後は、自由時間。
湯あみをして、自室に戻って……
やがて君達は緩やかにやってくる眠気のまま、ベッドに入ることだろう。
従者が傍らに控え、読み聞かせをしてくれる。
低く、眠気を誘う、柔らかい声だ……。
「むかし、むかし、あるところに――」
――それはそれは、美しいお姫様がおりました。
その美しさは、どんな人も見惚れてしまうほどでした。
けれど、その美しさが魅了したのは、人だけではなかったのです
美しいお姫様の噂を聞いて、とある怪物がお姫様に求婚しました。
しかしその怪物は、邪悪で、恐ろしく、ずる賢く、醜い者でした。
お姫様は求婚を断ります。すると悪い怪物は怒り狂って、お姫様をさらってしまったのです。
そこに現れたのが、御標に従って現れた、白馬に乗った王子様です。
王子様は悪い怪物をやっつけて、お姫様を見事に救い出しました。
勇ましく、美しい王子様に一目ぼれしたお姫様は、王子様と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ。
「めでたし、めでたし」
PC達が眠るなどひと段落でシーンエンド



▼シーン3:断片
――晴れ渡った空の記憶。
思えば、城の外にはロクに出たことがない。
父親と、母親と、きょうだいと。
自分達の世界は狭い。それでも、いっぱいいっぱい愛されて、幸せで。
思い出した。花の咲いた庭を駆ける記憶。誰しもが笑顔だった。
そこへ従者が、お菓子と紅茶を持って来る。
薔薇色の紅茶……僅かなのに満ち足りる、不思議なお菓子をひとかけら……
――それは幸せな記憶、あるいは夢。
君達は目を覚まし、昨日と同じ今日を送る。
嵐の城の中、同じような日々が過ぎる。
嵐はずっと、ずっと、止まない。止む気配はない……。
さて、君達は今、食堂で夕食をとっている。
今日のランチは赤いベリーソースが甘酸っぱい、チーズケーキだ。
「……お味は如何ですか?」 従者からいつもの質問
さてここで【縫製】で判定どうぞ。難易度9。
成功で
何か……嫌な雰囲気がする。
君達の直感が教えてくれる。
食堂の隅に、小さな“ほつれ”が生まれている。
そこから現れたのは、不気味な黒い影だ!
失敗で
その時だ、突然、君達の前に不気味な黒い影が現れる!
従者
「異形……!? なぜ―― ご主人様、お下がりを」
戦闘となる。
PC達←3m→凶獣←2m→悪霊達
悪霊*2、漆黒の凶獣とのミドル戦闘。いずれもデータはルルブp240。
※ただし悪霊の「呪い」は重圧以外にするか、呪い自体を削除。  凶重の無慈悲な一撃を削除。  初期レベルの場合は、漆黒の凶獣ではなく大蛇などワンランク低い相手にする。 基本的に調整必須。サクサク終わる程度の難易度で。 従者も味方として戦闘に参加すると良いだろう。GMはデータを作っておくこと。

戦闘中、従者が負傷すれば以下の描写
――目の前で散る、君達の従者の赤い血に。その傷に。
ザワリ 君達の心は酷く、毛羽だった。
「……失礼」 すぐに傷を隠す
※GMへ
一見、大事な従者が怪我をして怒っているように見せかけて……
その血を見て、鬼であるPC達の食欲という本能が刺激されているのが本当です。
戦闘後
先程の判定に失敗していれば、従者がほつれを発見し
「なぜ城内にほつれが……。他にほつれがないか調査して参ります。ご主人様は、残りのお食事を召し上がられましたら、ご自室で待機を」
「……いいですか。お食事は、必ず完食して下さい。残してはいけませんよ」
そう言って、従者は足早に退室してしまう。
まだ君達のティーカップには、薔薇色の紅茶とチーズケーキが残っている。
>従者を探そう等あれば
廊下で従者を見つける。
「ご主人様……ご自室で待機なさって下さいと申した筈です。危険ですから、さあ、お戻りください」
RPひと段落でシーンエンド



▼シーン4:宝石のような
――晩餐の記憶。
父親と母親が口にする料理は、美味しそうだけれど、不思議と「食べたい」とは思わなかった。
いつも自分達の前には、わずかなお菓子と甘い紅茶。
不思議なほどに、それは心と体を満たしてくれる。
「どうして?」と従者に聞いたことがある。「おまじないですよ」と従者は答えた。
そんな風に、いくつかの日々が、お城の中でずっとずっと過ぎて行って……。
ある日、君達は声を聴いたのだ。それは御標だった。
どんな御標だったんだっけ?
君達の目の前は真っ赤に染まったのだ。
それから……
……どうなったんだっけ?
ああ、でも。
そんなことよりも。
――お腹が空いた。喉が渇いた。どうしようも、なく……。
その日の、真夜中のことだった。
君達は耐え難い飢えと渇きに襲われて、目を覚ます。
真っ暗な部屋の中、嵐が窓を叩く音だけが聞こえる。
苦しいほどの飢餓だ。頭がどうにかなりそうだ。
……厨房に行けば何かあるかもしれない。
厨房には従者がいる。
彼は腕まくりをして、包丁を片手に持っていて……
その刃を自らの腕に突き立てる。肉を削いでいる。流れ出る血をガラスのボウルに注いでいる。
その血は赤い。されど不死者の証として、まるでオパールのような虹色の煌きを帯びていた。
「――ご主人様? なぜここに」
「これは……、瀉血です」
瀉血とは、人体の血液を外部に排出させることで「体の中の毒を抜く」治療法の一つである。
しかし、それが苦い言い訳だと君達は理解する。瀉血で肉を削ぐなんてありえない話だ。そもそも死なない不死者が、瀉血なんて健康術をする必要がない。
――だって、君達は昔、同じ風景を見たことがあるはずだ、知ってしまったはずだ――
――だって、君達がいつも食べていたものは、彼の血肉が混ぜられたものだから――
だがそんな思考を保てないほどに。
彼が自らの体から削いだ肉に。ボウルに並々と注がれた血に。
君達はどうしようもなくそそられるのだ。
あれを食べたい。あれを飲みたい。今すぐ、今すぐに!
「落ち着いて下さい、すぐに準備を」
そう言って、従者は血をそのままグラスに 肉をそのまま皿の上に 君達へ差し出すことだろう。
血はグラスの半分もない。肉も薄いものが数切れ。
だけど君達は、不思議とその少しで“満ち足りる”のだ。
一口貪れば、あら不思議。なんて美味しいことだろう! 体も心も満たされる。
オパール色に輝く血も、心が至福に蕩けるほど美味である。
……そうしてようやっと、君達の心に理性が戻る。
どういうことなのか、など質問があれば次のシーンへ。
▼シーン5:赤き真実
「……」
従者は黙している。
君達が「何故」を問いかけても、重い表情で、沈黙を壁の向こうの嵐に一任している。
彼を語らせるのは一筋縄ではゆくまい……。
どうか教えて欲しいと、確かな想いと、確固たる意志を従者に伝えねばなるまい。
【意志】or【感応】or【社会】 達成値12
剥離値を+1すればリロールできる。誰かが成功するまで行うこと。
従者はこんなことを語り始める……。
「むかし、むかし、あるところに――それはそれは、美しいお姫様がおりました」
それは、夜に君達へよく聴かせてくれる昔話だ。
その筋書きを君達は知っていることだろう。
「お姫様は、王子様と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ……めでたし、めでたし」
「……いいえ。物語には、続きがあるのです」
「怒りと憎しみと嫉妬に苛まれた悪い怪物は、死の間際に、お姫様と王子様に呪いをかけたのです」
『お前達の愛の果てに呪いあれ』と。
そして、生まれてきた二人の子供達にはツノが生えていた。
それだけではなく、その子供は人間の血肉を食わねば生きていけない体だった。
人の血肉を口にせねば、飢えに狂う鬼と化す――そんな呪いが、子供達にかけられていたのだ。
母親たる姫君は、父親である王子と共に、子らを城に閉じ込めてひた隠していた。
「私は昔から姫君にお仕えしていた不死の従者です。……人の食物を食べられない皆様の為に、私の体をご主人様のお食事として、ずっと提供しておりました」
「私はどれだけ“削っても”死にません。だから私が糧となることが、誰も死なずに済む方法だったのです」
「もちろん、禁忌でございます。不死者とは神に愛された者。その者の肉を他者に食べさせるなど……」
「そんなことが露見すれば、何の罪もない貴方達を、異端審問官が……民衆が、赦す筈もないでしょう」
「それでも……皆様との日々は、美しく、楽しかった……こんな日々がずっと、続けば良いと」
御導が下ったのは、そんな時だった。
『飢えに狂う三人の鬼は、全てを食らい尽くさんと人々に襲いかかります。
 しかし、鬼達の母親が神様へ一心に祈りを捧げると……どうしたことでしょう。
 鬼達は、鬼としての記憶を失い、永い永い眠りに落ちたのです。
 母親が我が子を城に閉じ込めると、城は嵐によって封印されました。
 こうして鬼が人々を食い殺すことはなくなったのです。
 めでたしめでたし』
「……そう。御標に従わねばなりませんでした。悪鬼と成り果てつつあった皆様を、どうにかする為には」
「私は守りとして、そしてご主人様が目覚めた時にそのお世話を務める者として、嵐の城に残りました」
君達は剥落していた記憶を思い出す。
自分達は呪われた忌み子であり、ずっと隠されて閉じ込められて生きていた。
君達の世界には、両親と従者ときょうだいだけ。
それでも、愛をたくさん受けてきた。
でも――世界は“異端”には優しくはなく――
御標が下った。その筋書き通り、君達は鬼として“覚醒”した。
そして知ってしまう。
自分達が食べてきたものが、従者の血肉だったことを。
自分達が、人間の血肉を貪らねば生きられぬ、呪われた悪鬼であることを。
そうだ。そして。
眠りに就いたのだ。誰かを傷付けずに済むように……。
「この嵐の城の封印は堅固で、永い永い間、護られ続けていました。しかし……ほつれによって、この城の封印が破られつつあります」
その結果、君達は目を覚ましたのだ。
そしてほつれは広がりつつある。
きっとそれに理由や犯人などはない。“ほつれ”や“歪み”とは、そんな理不尽の権化なのだから。
「少しずつ修繕しているのですが……あちらにもこちらにも。大きなほつれがどこかにあると思うのですが」
>両親は?
「この城を嵐で閉ざす時にお別れして以来……お会いしておりません。ここには手紙も届きません」
「永い時間が過ぎました……、人としての寿命を迎えているほどの……」
>私達は人を喰い殺してしまったことはある?
「ありません。誓って、本当です」
>ごめんね……
「ご主人様が謝られる必要はございません。私は、ご主人様を満たすことに誇りを覚えております」
「私は死にません。ご主人様にお仕えする喜びが、この心に色を灯す限り」
「痛みなど些細な過程です。ご主人様が心を痛める必要はないのです」
「……申し訳ございません。知らずともよいことも、この世にはあるというのに」
RP一段落で
その時だ。突如として、どこからか、ぞっとするほど厳かな声が残酷なほどに響き渡る。……御導だ。
『おぞましい三匹の悪鬼は、騎士と人々によって火あぶりにされてしまいましたとさ。めでたしめでたし』
これは歪んだ御標なのだろうか。
それとも、怪物は討たれるべきという、正しい御標なのだろうか。
ひときわ巨大な雷が落ちた。
――外に、ポッカリと真っ黒い、大きなほつれができていた。
「生まれたことが罪など、そんな酷いことが、ある筈がありません」
「ご主人様、貴方に罪はありません。貴方は、傷付くべきではないのです」
「(PCの苗字)家にお仕えすることが私の誇りです。どうか、ご主人様の、永遠のしもべで居させて下さい」
「あの御標が正しいはずがありません、ほつれから生じた御標など……」
>死にたい、消えたい、私は化物だ
「嗚呼、どうか、そのようなことを仰らないで」 ぎゅっと抱きしめる
「……あのほつれをどうにかせねば。歪んだ御標が、世界を歪めてしまわぬように」
※GMへ
PCの心が折れないように、適宜NPCで励まそう。
<クライマックスフェイズ>
▼シーン6:嵐の城と三匹の悪鬼
嵐は弱まりつつある――それは、ほつれの力が拡大していることを示していた。
真っ黒い、虚無を湛えた、まるで怪物の咢のような、大きな大きなほつれ……。
けれどそこに、ぽつぽつ、ぽつぽつ、小さな灯りが幾つも灯る。
それは城へと、真っ直ぐ歩いて来るではないか。
まもなく君達の目にも見えてくるだろう。
先頭には、曇白の馬に乗った漆黒の騎士。その後ろには、無数の黒い人影達。
「殺せ! 殺せ!」
「悪鬼を殺せ! 火あぶりだ!」
「呪われた嵐の城を燃やしてしまえ!」
影らは口々にそう叫ぶ。
黒い人影は手に手に矢をつがえ、引き絞る。放たれるのは無数の火矢だ。
それらは嵐の城を 君達の城を、燃やしてゆく。
その間に騎士が槍を構えて、固い城門をいとも容易く打ち砕くのだ。
君達はそれらを、庭園で待ち構えることだろう。
RPどうぞ。
RP一通りしたら、
「悪鬼に制裁を!!」
「『おぞましい三匹の悪鬼は、騎士と人々によって火あぶりにされてしまいましたとさ。めでたしめでたし』!」
黒い影は吼え狂い、君達に襲いかかる!
戦闘となる。
PC達←3m→騎士←2m→民衆達
□制裁の騎士
※GMはPC構成によって調整必須!
 以下は演者レベル6、かつデータを組んだNPCも戦闘に参加する場合です。
肉:5 他:4
INI5
HP150
MP60
防御:斬6/刺5/殴5/術4/縫3
命:10 回:5 術:3 抵:5
3d6+10 命中:クリティカル-1(歪んだ幸福込み)
3d6+3 〈刺〉ダメージ:防御-4でダメージ算出
2d6+5 回避/抵抗
【制裁の騎士槍】所持武器。〈刺〉+3、至近、命中0
【勇猛なる血】常時/命中のクリティカル-1
【無慈悲なる一撃】常時/ダメ+2d6
【貫きの一打】メジャー/単体/至近/4MP/防御-4でダメ算出
【返し刃】オート/1MP/命中判定リロール
【虚ろなる魂】オート/HP3/BS回復
【†欠けていく世界】判定直前/場面(選択)/視界/ラウンド中、メジャーアクションを行う度に3d6の実ダメージ。メジャー放棄で不発。
【†潜在覚醒】イニシアチブ/自身/-/ラウンド中、あらゆる代償を支払わなくて良い。
【†瞬速行動】イニシアチブ/自身/-/即座にメインプロセス。1ラウンド1回。
【†歪んだ幸運】判定直前/自身/-/ダイスを3d6に変更。
【†神速移動】いつでも/自身/-/シーン内の任意の場所に移動。
【†空を砕きて来たるもの】いつでも/自身/-/エネミー召喚
※PCが【憤怒の一撃】を持っている時のみ
【†幸福の壁】いつでも/範囲(選択)/至近/自身のエンゲージ内の防御修正+3d6。ラウンド中持続。逸脱能力にも有効。
 †が付いた特技は逸脱能力。
・逸脱能力回数
【†欠けていく世界】1
【†潜在覚醒】3
【†瞬速行動】2
【†歪んだ幸運】3
【†神速移動】3
【†空を砕きて来たるもの】2
【†幸福の壁】1

□制裁の民衆*2
ルルブp239の兵士。
攻撃手段を以下に変更。
【十字弓】〈刺〉+3/射程45m

▽エネミーの動かし方
・騎士
最初のセットアップで【†欠けていく世界】
最初のイニシアチブで【†潜在覚醒】。これは毎ラウンドの最初のイニシアチブで積極使用すること。剥離チェック用のサービス。
同時に【†神速移動】しPCにエンゲージ。
(「エンゲージ内の敵に攻撃できない」タイプのPCがいる場合、攻撃後に再び神速移動して離れてあげよう)
(神速移動は演出的に無駄に使って、剥離チェック用のサービスにすること)
自分のメインプロセスのイニシアチブで【†瞬速行動】。
【†歪んだ幸運】を使用してPCに攻撃。【返し刃】は出目が腐った時に。
続けて自分の本来のメインプロセス。
残り一回となる【†瞬速行動】は様子を見て使おう。PCを追い詰めすぎなら使わない、逆にPCの優勢なら次ラウンドの最初のイニシアチブで使用。
【†空を砕きて来たるもの】は、「制裁の民衆」がやられたラウンドのクリンナッププロセスに使用しよう。
・民衆
ダイスでランダムに選んだPCを弓でチクチク削ろう。
ちょっとコイツらが脅威すぎたら、【†空を砕きて来たるもの】を自重。
・RP例
「悪鬼め、成敗してくれる!」
「人食いの鬼は火あぶりだ!」
「殺せ! 殺せ! 殺せ!!」
「おのれ、神を冒涜するか!」 PCが逸脱能力を使ったら
「ころ……セ……悪鬼を……殺…… 」 撃破時
他、上記の御標を叫んだり。
“化物を殺すことに躍起になっている民衆”“正義に溺れている愚衆”をイメージしましょう。

▽撃破したら
ほつれが生んだそれらは、ボロボロと黒い塵となって崩れて、消えた。
必ず剥離チェックを行い、エンディングシーンへ移る。



<エンディングフェイズ>
▼シーン7:晴天、そして
……そうして、残ったのは大きなほつれと、晴れ上がった城だ。
真っ青な、真っ青な、色鮮やかな空、そして輝く太陽……久し振りに見た気がする。
さて。
ほつれを修復すれば、この城に施された封印は再び効果を発揮される――つまり、君達はまた封印の眠りに落ち、城は嵐に閉ざされる。
それは、君達がこの場で――城の領地内でほつれを修復すれば、という話。
従者が城に残り、君達が外に出て、残った従者がほつれを修復すれば、君達は封印されない。君達は自由だ。
あるいは誰かが城から出て、誰かが城に残り、ほつれを修復するという手もあるだろう。
もうひとつ。災禍の元凶であるほつれを放置し、全員でこの城から出ていくこともできる。
ほつれを修復する場合、任意のPC一人の剥離値を+2する。この結果、剥離値が10を超える場合、そのPCは伽藍となる。
どういう決断をするかはPCに委ねる。
「私はご主人様のものです。皆様の御決断に従います」 従者は一礼し、運命を委ねる。
★Aエンド:最後の挨拶
・従者だけが城に残ってほつれを直し、PC達が旅立つ場合
「承りました」
従者は恭しく一礼する。
それから、徐に懐からナイフを取り出すと、自分の指を三本、斬り落とす。
それを一本ずつ、君達に持たせることだろう。
「“発作”が出ましたら、こちらを舐めたり、かじったりして下さい。食べ尽くしてはいけませんよ。不死者のものですから、腐敗はしません。わずかな損傷であれば修復されるでしょう」
「……ご主人様の旅路に、たくさんの祝福と幸福がありますよう。行ってらっしゃいませ」

君達は、城から続く一本道を歩いて行く。
城から出たのは、初めてだ。
ずっと歩いて、歩いて歩いて……後方の城が小さくなった頃、一条の雷鳴が響いた。
振り返れば、城は嵐に閉ざされている。従者がほつれを直したのだろう。

永遠の嵐、永遠の城、そこに一人、永遠の従者。
時が動かぬ世界の中、従者はいつまでも、主人の幸福を祈り続けるだろう。
めでたし、めでたし。


★Bエンド:両手いっぱいの呪いと祝福
・ほつれを直さず、従者もPCも全員で城から出る場合
「承りました」
従者は恭しく一礼する。
「最後に晩餐を如何です。旅立つ前は、お腹いっぱいでいたいでしょう。ささ、遠慮なさらずに。どうかご主人様を満たさせて下さい」
>食べる
ガランとした食堂。
蝋燭の明かりが暗い城を照らす。
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは……チョコレートケーキ、フロランタン、マカロン、チーズケーキと、たくさんのケーキ。
それから大きな、あつあつのミートパイ。スライスされた生肉が入ったサンドイッチ。
飲み物は、甘い薔薇色の紅茶。
……その正体を、君達は知っている。
でも。従者は体を包帯だらけにしながらも、愛いっぱいに優しく微笑んで、君達を見守っているのだ。
「召し上がれ、ご主人様」
――それらは美味しい。とても美味しい。体も心も満たされる。心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
>断る
そのまま以下の描写へ
-------------
城門まで、従者は見送りに来てくれた。
「……ご主人様の旅路に、たくさんの祝福と幸福がありますよう。忘れ物はございませんか?」

君達は、城から続く一本道を歩いて行く。
城から出たのは、初めてだ。
灰色の城が遠ざかる。傍らに、漆黒のほつれを携えたまま。
きっとあれは、いつか災禍をばらまくのだろう。
それでも――それでも、だ。
自由になりたかった。外の世界を知りたかった。
たとえ、悪鬼と罵られても。

空は青く、太陽は煌く。道々には、祝福するように鮮やかな花。
君達はどこまでも、どこまでも、自由に歩いて行くのでした。
めでたし、めでたし。


★Cエンド:永遠の楽園
・全員が城に残り、ほつれを直す場合
「承りました」
従者は恭しく一礼する。
「……ご主人様の御決断に心からの敬意と賛辞を。それでは……参りましょうか」
君達はほつれを修復する。世界の穴は縫い塞がれて、元通り。
すると空が曇り始め、風が、雨が、吹き荒れ始めることだろう。
そして君達に、少しずつ、睡魔が迫る。
「最後に晩餐を如何です。眠る前は、お腹いっぱいでいたいでしょう。ささ、遠慮なさらずに。どうかご主人様を満たさせて下さい」
>食べる
ガランとした食堂。
蝋燭の明かりが暗い城を照らす。
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは……チョコレートケーキ、フロランタン、マカロン、チーズケーキと、たくさんのケーキ。
それから大きな、あつあつのミートパイ。スライスされた生肉が入ったサンドイッチ。
飲み物は、甘い薔薇色の紅茶。
……その正体を、君達は知っている。
でも。従者は体を包帯だらけにしながらも、愛いっぱいに優しく微笑んで、君達を見守っているのだ。
「召し上がれ、ご主人様」
――それらは美味しい。とても美味しい。体も心も満たされる。心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
>断る
そのまま以下の描写へ
----------
そして君達は、自室のベッドに横になった。
暗い部屋、嵐の音が窓を揺らす。
部屋のピアノの前に従者が座った。
「おやすみなさいませ、ご主人様。……どうかゆるりと、お眠り下さい」
そう言って、従者はピアノを弾き始める。
冷たい嵐の音を君達の耳から追い出す、温かい旋律。懐かしい旋律。
そうだ、自分達が小さい小さい頃、嵐が怖くて眠れぬ日に、従者が轢いてくれた音色。

優しい旋律の中、君達は悠久の眠りに落ちていく。
――嗚呼、これで、もう二度と、誰かを傷付けることはない。
めでたし、めでたし。


★Dエンド:良き旅路を
・城に残るPC、旅立つPCに別れた場合
「承りました」
従者は恭しく一礼する。
「……ご主人様の御決断に心からの敬意と賛辞を」
「最後に晩餐を如何です。眠る前は、旅立ちの前は、お腹いっぱいでいたいでしょう。ささ、遠慮なさらずに。どうかご主人様を満たさせて下さい」
>食べる
ガランとした食堂。
蝋燭の明かりが暗い城を照らす。
席に着くのは君達三人だけ。
目の前にあるのは……チョコレートケーキ、フロランタン、マカロン、チーズケーキと、たくさんのケーキ。
それから大きな、あつあつのミートパイ。スライスされた生肉が入ったサンドイッチ。
飲み物は、甘い薔薇色の紅茶。
……その正体を、君達は知っている。
でも。従者は体を包帯だらけにしながらも、愛いっぱいに優しく微笑んで、君達を見守っているのだ。
「召し上がれ、ご主人様」
――それらは美味しい。とても美味しい。体も心も満たされる。心が至福に蕩けるほど美味である。
「……お味は如何ですか?」
>断る
そのまま以下の描写へ
----------
城門まで、従者は見送りに来てくれた。
旅立つ者達を、見送ることとなる。
「……ご主人様の旅路に、たくさんの祝福と幸福がありますよう。忘れ物はございませんか?」
<まず旅立つPCの描写>
君達は、きょうだいを残して、城から続く一本道を歩いて行く。
城から出たのは、初めてだ。
ずっと歩いて、歩いて歩いて……後方の城が小さくなった頃、一条の雷鳴が響いた。
振り返れば、城は嵐に閉ざされている。きょうだいがほつれを直したのだろう。
空は青く、太陽は煌く。道々には、祝福するように鮮やかな花。
君達はどこまでも、どこまでも、自由に歩いて行くのでした。
めでたし、めでたし。

従者が旅立つPCと一緒にいない場合、以下の描写を上の描写の前に挟む
従者は、徐に懐からナイフを取り出すと、自分の指を旅立つ者の人数分、斬り落とす。
それを一本ずつ、君達に持たせることだろう。
「“発作”が出ましたら、こちらを舐めたり、かじったりして下さい。食べ尽くしてはいけませんよ。不死者のものですから、腐敗はしません。わずかな損傷であれば修復されるでしょう」
「……ご主人様の旅路に、たくさんの祝福と幸福がありますよう。行ってらっしゃいませ」
従者が旅立つPCと一緒にいる場合は、「私がお守りします」など一言喋るといいだろう。

<次に残ったPC>
※従者がいる場合
きょうだいを見送って……
君達はほつれを修復する。世界の穴は縫い塞がれて、元通り。
すると空が曇り始め、風が、雨が、吹き荒れ始めることだろう。
そして君達に、少しずつ、睡魔が迫る。
君達は、自室のベッドに横になった。
暗い部屋、嵐の音が窓を揺らす。
部屋のピアノの前に従者が座った。
「おやすみなさいませ、ご主人様。……どうかゆるりと、お眠り下さい」
そう言って、従者はピアノを弾き始める。
冷たい嵐の音を君達の耳から追い出す、温かい旋律。懐かしい旋律。
そうだ、自分達が小さい小さい頃、嵐が怖くて眠れぬ日に、従者が轢いてくれた音色。
優しい旋律の中、君達は悠久の眠りに落ちていく。
――嗚呼、これで、もう二度と、誰かを傷付けることはない。
めでたし、めでたし。
※従者が旅立つPCについていった場合
君達は、自室のベッドに横になった。
暗い部屋、嵐の音が窓を揺らす。
ふと、思い出すのは――自分達が小さい小さい頃、嵐が怖くて眠れぬ日に、従者が轢いてくれたピアノの音色。
冷たい嵐の音を君達の耳から追い出す、温かい旋律。懐かしい旋律。
今、ここにそれを奏でる者はいない。ピアノは蓋をされたまま、静かに部屋の隅で佇んでいる。
優しい旋律を思い出しながら、君達は悠久の眠りに落ちていく。
――嗚呼、これで、もう二度と、誰かを傷付けることはない。
めでたし、めでたし。


★Eエンド:悪鬼共は牙を剥く
・全滅した場合。
ほつれが、どこまでも広がっていく。
それは君達の心を、悪鬼のそれとして狂気に塗り潰す――
君達は、もはや君達ではない。
鬼だ。人を食う、悍ましい鬼だ。
「……それが、ご主人様の御決断ならば」
従者は跪き、己の命運を受け入れるだろう。
そんな従者に、君達は――飢えた爪牙を伸ばすのだ。
やがて。
この従者だけでなく。
多くの、多くの人間らが、恐ろしい三匹の悪鬼に食い尽くされることだろう。
めでたし、めでたし。



<あとがき>
Q、なんで三匹なの?
A、三匹の子豚のリスペクトです。
  特に数にこだわりはないです! ので、ソロシナリオにも改変できます。エネミー調整必須ですが……。
  その際は、タイトルを「三匹の」ではなく「永遠の」にするといいでしょう。
  嵐の城と永遠の子羊。
  永遠に城に囚われている、永遠に眠り続ける、という意味合いを込めて。
Q、PCの両親の生死は?
A、ご自由にどうぞ。
  シナリオ内で従者が言った通り、人であれば老衰しているレベルで時が経っているので、死んでいる可能性が高いです……が、
  城の外と中では時の流れが違うなどの理由で、両親がまだ生きているというのもアリです。

以下、拙作「優しいモノの物語」プレイ済みの方へ
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8338474
※未プレイの方は該当シナリオのネタバレになります、ご注意ください!
深く考えずに作ったのですが、優しいモノの物語のNPCの過去編みたいになりました。
ひょっとしたら、優しいモノの物語のNPCは、このシナリオのIFの世界線の、子羊の成れの果てなのかもしれません。
もちろん、このシナリオで旅立ったPCが、優しいモノの物語のNPCになるとは決まっておりません。
旅立ったPCがどのような旅路になるかは、きっとまた、別のお話なのでしょう。
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